﻿1
00:00:34,082 --> 00:00:37,282
(犬の遠吠え)

2
00:00:41,490 --> 00:00:43,525
(東助)酒だ 酒だ～｡

3
00:00:43,525 --> 00:00:45,827
飲むぞ 飲むぞ～！

4
00:00:45,827 --> 00:00:48,527
(笑い声)

5
00:00:51,166 --> 00:00:53,101
(種市)大根と油揚げの椀を３つ！

6
00:00:53,101 --> 00:00:55,671
(芳)こちらは 蓮根のきんぴらを
２人前だす！

7
00:00:55,671 --> 00:00:57,606
(ふき)おいでなさいませ！

8
00:00:57,606 --> 00:00:59,541
(丑丸)親父 まずは酒だ！
はい｡

9
00:00:59,541 --> 00:01:02,444
(東助)うまそうだな おい！
おい こっちにもくれ！

10
00:01:02,444 --> 00:01:07,015
(おりょう)何だい 座りもしないうちから｡
食い意地 張ってるねえ もう｡

11
00:01:07,015 --> 00:01:10,052
又さん 熱燗１本｡
≪(又次)はいよ｡
お澪坊 菊花雪だ｡

12
00:01:10,052 --> 00:01:12,521
(澪)は～い｡

13
00:01:12,521 --> 00:01:24,199
♬～

14
00:01:24,199 --> 00:01:27,199
(又次)はいよ｡
ありがとうございます｡

15
00:01:29,538 --> 00:01:31,838
お願いします！

16
00:01:36,645 --> 00:01:38,680
(弥三郎)う～ん｡

17
00:01:38,680 --> 00:01:40,983
お口に合いましたでしょうか｡

18
00:01:40,983 --> 00:01:46,488
いずれも 実にうまい！
おおきに ありがとうございました｡

19
00:01:46,488 --> 00:01:51,360
妻にせがまれて来たかいがあった｡
まあ｡

20
00:01:51,360 --> 00:01:54,663
≪(種市)お澪坊 だし巻きは まだかい？

21
00:01:54,663 --> 00:01:57,463
≪は～い ただいま！

22
00:02:13,181 --> 00:02:16,685
又さん ありがとよ｡
こいつぁ 今日の分だ｡

23
00:02:16,685 --> 00:02:19,521
遠慮なく頂戴するぜ｡

24
00:02:19,521 --> 00:02:25,394
又次さんがいてくれはるおかげで
｢三方よしの日｣は いつも大入りです｡

25
00:02:25,394 --> 00:02:28,864
なに｡ 俺ぁ 里ん中しか
知らなかったから➡

26
00:02:28,864 --> 00:02:32,467
10日に一度
こうして みんなと働けるのが➡

27
00:02:32,467 --> 00:02:35,804
どうにも うれしいのさ｡

28
00:02:35,804 --> 00:02:39,141
柄じゃねえがな｡

29
00:02:39,141 --> 00:02:43,478
それじゃ すまねえが 今夜も
お澪坊とご寮さん 送ってくれるかい｡

30
00:02:43,478 --> 00:02:46,515
(又次)もちろんだ｡

31
00:02:46,515 --> 00:02:49,151
(小松原)う～ 寒い寒い｡
(種市)小松原様！

32
00:02:49,151 --> 00:02:52,654
親父 熱いのを頼む｡
(種市)へい！

33
00:02:52,654 --> 00:02:54,854
(ふき)旦那さん｡
(種市)ん？

34
00:02:58,293 --> 00:03:01,663
よう｡ 下がり眉｡

35
00:03:01,663 --> 00:03:04,166
ああ いい いい｡ すぐに乾く｡
でも…｡

36
00:03:04,166 --> 00:03:10,839
聞いているぞ｡ ｢三方よしの日｣とは
なかなか しゃれたことを考えたものだな｡

37
00:03:10,839 --> 00:03:16,712
ふだんは酒を出さぬ つる家が
月に三度 三のつく日にだけ酒を出す｡

38
00:03:16,712 --> 00:03:21,550
店によし 客によし 世間によしで
三方よし｡

39
00:03:21,550 --> 00:03:25,320
フッ 全く お前さんてやつは➡

40
00:03:25,320 --> 00:03:28,190
眉に似合わず 知恵者だ｡

41
00:03:28,190 --> 00:03:32,627
眉で考えるわけや ありません｡
フッ｡

42
00:03:32,627 --> 00:03:36,264
あ～ 寒い｡
俺ぁ 何だか寒気がしてきたぜ｡

43
00:03:36,264 --> 00:03:38,967
悪いが お澪坊 あと任せた｡

44
00:03:38,967 --> 00:03:42,804
えっ｡ 旦那さん 大事ありませんか｡
私が お布団敷きます｡

45
00:03:42,804 --> 00:03:45,707
又次さん すんません
雨降りのようやさかい➡

46
00:03:45,707 --> 00:03:48,477
わてらは 今夜
こちらに泊めて頂こう思います｡

47
00:03:48,477 --> 00:03:52,347
えっ｡ あ～ うん そいつがいい
うん そうしな｡

48
00:03:52,347 --> 00:03:55,047
じゃあ 澪さん また10日後に｡

49
00:03:59,988 --> 00:04:02,657
おい｡

50
00:04:02,657 --> 00:04:04,993
何か食わせろ｡

51
00:04:04,993 --> 00:04:07,193
はい｡

52
00:04:40,629 --> 00:04:55,811
♬～

53
00:04:55,811 --> 00:05:01,483
ん？ 何だ｡

54
00:05:01,483 --> 00:05:06,354
何か…｡
何か？

55
00:05:06,354 --> 00:05:10,659
何か緑色のものが…｡

56
00:05:10,659 --> 00:05:13,295
ああ 取ってくれ｡

57
00:05:13,295 --> 00:05:16,295
でも…｡
取れ｡

58
00:05:18,166 --> 00:05:20,502
…はい｡

59
00:05:20,502 --> 00:05:41,790
♬～

60
00:05:41,790 --> 00:05:45,660
ああ ほうき草の実だな｡

61
00:05:45,660 --> 00:05:47,662
ほうき草？

62
00:05:47,662 --> 00:05:50,966
うん｡ 枝は 箒の材料だが➡

63
00:05:50,966 --> 00:05:53,635
実は 料理にも使えるらしい｡

64
00:05:53,635 --> 00:05:55,670
まあ｡

65
00:05:55,670 --> 00:05:58,974
母方の祖父は
もう亡くなってしまったが➡

66
00:05:58,974 --> 00:06:02,474
陸奥の出で これをよく好んだと聞く｡

67
00:06:06,147 --> 00:06:08,650
ん？

68
00:06:08,650 --> 00:06:15,423
いえ｡ あの… 初めてやなと思て｡

69
00:06:15,423 --> 00:06:17,993
何が？

70
00:06:17,993 --> 00:06:22,831
小松原様が
ご自分のことをお話しして下さるの｡

71
00:06:22,831 --> 00:06:48,990
♬～

72
00:06:48,990 --> 00:06:51,459
また来るよ｡
おおきに｡

73
00:06:51,459 --> 00:06:54,459
またのお越しを お待ちしとります｡

74
00:06:59,200 --> 00:07:01,400
あ…｡

75
00:07:05,006 --> 00:07:08,506
早帆といいます｡
お見知りおき下さい｡

76
00:07:10,645 --> 00:07:13,548
あなたが こちらの料理人ですか｡

77
00:07:13,548 --> 00:07:17,819
はい｡ 澪と申します｡

78
00:07:17,819 --> 00:07:21,489
澪さん 一つお願いがあります｡

79
00:07:21,489 --> 00:07:25,489
私に お料理を指南して頂けませんか｡

80
00:07:28,663 --> 00:07:35,103
恥をお話ししますが 嫁いで13年
一向に料理が上達いたしませぬ｡

81
00:07:35,103 --> 00:07:39,107
本来 奉公人に任せていればよいのですが
たとえ 時折でも➡

82
00:07:39,107 --> 00:07:42,807
私は自身で試みたいたちなのです｡

83
00:07:44,813 --> 00:07:49,651
夫の好物のかき揚げを作れば
歯こぼれしそうなものしか出来ず➡

84
00:07:49,651 --> 00:07:55,123
里芋の煮つけは えぐいばかり｡
煮魚は ぱさぱさで 焼き魚は ぐずぐず｡

85
00:07:55,123 --> 00:07:58,994
鮎飯は焦げ焦げで 栗飯は ごわごわです｡

86
00:07:58,994 --> 00:08:05,133
おや まあ｡
そりゃあ 奥方様 相当なもんですよ｡

87
00:08:05,133 --> 00:08:11,806
ええ｡ 私の作った料理を食べたくないと
泣いて里に帰った侍女もおります｡➡

88
00:08:11,806 --> 00:08:16,144
湯豆腐は ありえないほど鬆が入って
軽石のようになります｡

89
00:08:16,144 --> 00:08:19,814
作った本人が申すのも何なのですが
食べ進めるうちに➡

90
00:08:19,814 --> 00:08:23,485
豆腐なのか 軽石なのか
分からなくなりました｡

91
00:08:23,485 --> 00:08:27,288
プッ… ハハッ 申し訳おまへん｡

92
00:08:27,288 --> 00:08:35,788
(笑い声)

93
00:08:37,432 --> 00:08:41,302
ほな 料理の下ごしらえを
お教えすることにしたんか｡

94
00:08:41,302 --> 00:08:46,107
はい｡
早帆様の場合 その方がええと思います｡

95
00:08:46,107 --> 00:08:48,610
下ごしらえを おろそかにしたのでは➡

96
00:08:48,610 --> 00:08:52,480
決して おいしい料理には
仕上がらんさかいな｡

97
00:08:52,480 --> 00:08:58,787
天満一兆庵の旦那さんも
いつも 口癖のように…｡

98
00:08:58,787 --> 00:09:02,987
[ 回想 ]
(嘉兵衛)佐兵衛｡ 佐兵衛｡

99
00:09:04,659 --> 00:09:07,128
(嘉兵衛)佐兵衛～｡
(芳)佐兵衛！
若旦さ～ん！

100
00:09:07,128 --> 00:09:09,464
(嘉兵衛)どないなっとんのや｡

101
00:09:09,464 --> 00:09:16,164
澪… 託せるのは おまはんだけや｡

102
00:09:19,140 --> 00:09:25,940
何としても 天満一兆庵の暖簾を…｡

103
00:09:29,284 --> 00:09:31,284
この江戸に…｡

104
00:09:33,922 --> 00:09:40,095
何で 佐兵衛は
訪ねてきてくれへんのやろか｡

105
00:09:40,095 --> 00:09:45,433
わてらが 江戸に つる家にいてることは
知ってるはずやのに｡

106
00:09:45,433 --> 00:10:05,133
♬～

107
00:10:09,257 --> 00:10:14,129
里芋のえぐみは お米のとぎ汁で
下ゆですることで抜けますよ｡

108
00:10:14,129 --> 00:10:19,000
煮つけなら艶やかに仕上がりますし
柔らかな丸い味になるんです｡

109
00:10:19,000 --> 00:10:22,270
まあ！ 知りませんでした｡

110
00:10:22,270 --> 00:10:27,475
煮崩れや色あせを避けたいのなら
下ゆでした方がいいんですよ｡

111
00:10:27,475 --> 00:10:31,279
小松菜の煮浸しが 真っ黒で
どろどろだった理由が分かりました｡

112
00:10:31,279 --> 00:10:33,579
(笑い声)

113
00:10:36,117 --> 00:10:41,823
すっかり打ち解けてらぁ｡
まるで姉妹みてぇだぜ｡

114
00:10:41,823 --> 00:10:44,292
どこかで
お会いしたような気がするんです｡

115
00:10:44,292 --> 00:10:46,661
早帆様かい？

116
00:10:46,661 --> 00:10:51,661
実は 俺もそうなんだ｡
だが 一向に思い出せねぇ｡

117
00:10:55,170 --> 00:10:58,006
あの 早帆様｡
はい｡

118
00:10:58,006 --> 00:11:03,812
お武家では お母上様から
料理を教わったりはなさらないのですか？

119
00:11:03,812 --> 00:11:09,517
子細は伏せますが お役目柄 亡き父は
母が台所に入るのを好まず➡

120
00:11:09,517 --> 00:11:13,855
私は 料理をする母を
見たことがございません｡

121
00:11:13,855 --> 00:11:18,026
兄によれば
私に輪をかけて料理下手だとか｡

122
00:11:18,026 --> 00:11:21,863
それは また すさまじい…｡

123
00:11:21,863 --> 00:11:24,199
澪さん｡

124
00:11:24,199 --> 00:11:28,703
(笑い声)

125
00:11:28,703 --> 00:11:32,140
すんません｡

126
00:11:32,140 --> 00:11:40,014
実は 母は
もう長くないかもしれないのです｡
え…｡

127
00:11:40,014 --> 00:11:44,485
長らく腎の臓を患い
むくみに苦しんでいます｡

128
00:11:44,485 --> 00:11:49,485
お医者様も手を尽くして下さったのですが
もはや…｡

129
00:11:52,994 --> 00:11:57,494
あ… ごめんなさい｡
湿っぽい話をいたしました｡

130
00:12:02,503 --> 00:12:05,840
では 武家のご妻女に
料理を指南しているんですか｡

131
00:12:05,840 --> 00:12:08,877
はい｡

132
00:12:08,877 --> 00:12:12,513
町人ならば
母親が口うるさく教えますが➡

133
00:12:12,513 --> 00:12:18,019
武家では
重きを置くところが違いますからね｡

134
00:12:18,019 --> 00:12:20,855
通りかかっただけなのに
お茶をごちそうになってしまいました｡

135
00:12:20,855 --> 00:12:25,727
すいません｡
そんな｡ いつでも来て下さい｡

136
00:12:25,727 --> 00:12:28,227
では これで｡

137
00:12:32,500 --> 00:12:37,972
あの 源斉先生｡
はい｡

138
00:12:37,972 --> 00:12:41,276
むくみに効くお薬は ありますでしょうか｡

139
00:12:41,276 --> 00:12:44,479
むくみ｡
早帆様の…➡

140
00:12:44,479 --> 00:12:50,285
先ほどの方のお身内が
腎の臓を患ってらっしゃって｡

141
00:12:50,285 --> 00:12:54,155
そのような病人には
地膚子を使います｡

142
00:12:54,155 --> 00:12:56,491
じふし？
はい｡

143
00:12:56,491 --> 00:13:00,161
ほうき草の実を乾かした薬種です｡

144
00:13:00,161 --> 00:13:02,461
ほうき草…｡

145
00:13:04,165 --> 00:13:06,935
[ 回想 ]
ほうき草の実だな｡

146
00:13:06,935 --> 00:13:11,235
枝は 箒の材料だが
実は料理にも使えるらしい｡

147
00:13:14,175 --> 00:13:19,013
ほうき草の実を料理に用いる土地が
あるというのは まことでしょうか｡

148
00:13:19,013 --> 00:13:21,683
料理にですか｡

149
00:13:21,683 --> 00:13:25,483
いや… 皆目見当もつきません｡

150
00:13:29,324 --> 00:13:33,628
えっ！ では 清右衛門先生
今度こそ 書かれるのですね｡

151
00:13:33,628 --> 00:13:35,563
あさひ太夫の物語を｡

152
00:13:35,563 --> 00:13:38,800
うむ｡ ようやっと あさひ太夫を➡

153
00:13:38,800 --> 00:13:42,670
幼い頃に売り飛ばした女衒を
突き止めたのだ｡➡

154
00:13:42,670 --> 00:13:44,672
詳しい話が聞き出せた｡

155
00:13:44,672 --> 00:13:47,976
(坂村堂)では 速やかに
お帰りになって下さい｡
(清右衛門)ん？

156
00:13:47,976 --> 00:13:50,878
何をいつまでも
くつろいでいらっしゃるのです｡

157
00:13:50,878 --> 00:13:55,283
さあ お勘定は私に任せて
早く帰って書いて下さい！

158
00:13:55,283 --> 00:13:57,352
せかすな｡
早く！

159
00:13:57,352 --> 00:13:59,487
清右衛門先生！

160
00:13:59,487 --> 00:14:03,987
何だ｡ 蕪の柚子漬けなら
悪くなかったぞ｡

161
00:14:05,660 --> 00:14:09,163
お願いいたします｡
何だ｡

162
00:14:09,163 --> 00:14:12,667
何をお願いされてるのだ わしは｡

163
00:14:12,667 --> 00:14:17,005
あさひ太夫のことを書くのは
取りやめて下さい｡

164
00:14:17,005 --> 00:14:21,309
何をたわけたことを…｡

165
00:14:21,309 --> 00:14:25,179
あさひ太夫と私は➡

166
00:14:25,179 --> 00:14:28,182
幼なじみなんです｡

167
00:14:28,182 --> 00:14:30,182
何だと…！

168
00:14:36,791 --> 00:14:39,460
(東西)これは まさに天下取り｡

169
00:14:39,460 --> 00:14:42,130
太閤はんにも勝る➡

170
00:14:42,130 --> 00:14:45,133
旭日昇天の相や！

171
00:14:45,133 --> 00:14:47,802
えらいこっちゃ 天下取りやで！

172
00:14:47,802 --> 00:14:49,737
ちょっと みんな聞いたか!?

173
00:14:49,737 --> 00:14:51,672
(野江)澪ちゃん｡➡

174
00:14:51,672 --> 00:14:58,980
私は旭日昇天より 澪ちゃんが言われた
雲外蒼天の方がええ｡

175
00:14:58,980 --> 00:15:01,816
え？ な… 何で？

176
00:15:01,816 --> 00:15:03,851
天下取るような運やったら➡

177
00:15:03,851 --> 00:15:08,051
それに見合うような不運も
連れてくるんや｡

178
00:15:10,491 --> 00:15:15,691
それから間もなく
享和の大水がありました｡

179
00:15:18,232 --> 00:15:24,172
私は みなしごになり
ご寮さんに助けて頂きました｡

180
00:15:24,172 --> 00:15:29,372
幼なじみは生きてるかどうかも
分からへんままでしたが…｡

181
00:15:36,651 --> 00:15:39,351
野江ちゃん…？

182
00:15:41,122 --> 00:15:43,791
生きて…｡

183
00:15:43,791 --> 00:15:46,461
(又次)あさひ太夫｡

184
00:15:46,461 --> 00:15:49,761
…てえのが その人の名だ｡

185
00:15:54,802 --> 00:16:00,102
雲外蒼天の方が ずっとええ｡

186
00:16:06,280 --> 00:16:10,651
お願いします｡ もう誰にも➡

187
00:16:10,651 --> 00:16:13,287
野江ちゃんを傷つけてほしくない｡

188
00:16:13,287 --> 00:16:15,987
見世物にしてほしくないんです｡

189
00:16:17,825 --> 00:16:20,525
享和の大水と言ったか｡

190
00:16:22,497 --> 00:16:26,300
わしも あの時 戯作の筆の足しにと➡

191
00:16:26,300 --> 00:16:28,836
大坂へ出かけた｡

192
00:16:28,836 --> 00:16:33,336
そうか あの地獄絵図の中に…｡

193
00:16:35,943 --> 00:16:40,143
あ～ いつまで そうしてるのだ｡
話しづらくてしょうがない｡

194
00:16:44,619 --> 00:16:50,619
お前は あさひ太夫が どうやって
今の位に上り詰めたか知っているのか｡

195
00:16:54,629 --> 00:16:59,829
お前の幼なじみは記憶を失い
お助け小屋にいた｡

196
00:17:02,270 --> 00:17:05,473
(清右衛門)
それを知った女衒の卯吉という男が➡

197
00:17:05,473 --> 00:17:08,509
かどわかし同然に 江戸へ連れていき➡

198
00:17:08,509 --> 00:17:12,246
翁屋の楼主に売ったのだ｡

199
00:17:12,246 --> 00:17:16,817
旭日昇天の易を受けた娘だ｡

200
00:17:16,817 --> 00:17:19,817
高う売れるで｡

201
00:17:22,156 --> 00:17:27,856
(清右衛門)そして その娘が
禿から新造になる時のことだ｡

202
00:17:29,664 --> 00:17:32,433
(清右衛門)いずれも 江戸で
その名を知らぬ者はいない➡

203
00:17:32,433 --> 00:17:35,469
御用商人が３人｡➡

204
00:17:35,469 --> 00:17:43,269
それぞれ 4, 000両を翁屋に預けて
遊女としてのあさひを買い上げたのだ｡

205
00:17:45,980 --> 00:17:52,453
(清右衛門)それ故 あさひ太夫は
ほかに客を取る憂いもないし➡

206
00:17:52,453 --> 00:17:56,253
楼主から借財を重ねることもない｡

207
00:17:58,259 --> 00:18:01,629
(清右衛門)あさひ太夫は翁屋では別格｡➡

208
00:18:01,629 --> 00:18:05,132
形の上では抱え遊女でありながら➡

209
00:18:05,132 --> 00:18:09,637
下へも置かぬ
客人扱いを受けているのだ｡➡

210
00:18:09,637 --> 00:18:12,937
それだけでも救いと思うことだ｡

211
00:18:14,809 --> 00:18:21,482
そんな…｡ そんなふうには とても…｡

212
00:18:21,482 --> 00:18:24,819
(清右衛門)ならば こうせよ｡

213
00:18:24,819 --> 00:18:29,690
お前が あさひ太夫を身請けするのだ｡➡

214
00:18:29,690 --> 00:18:34,495
身請け代 4, 000両を払えば かなうことだ｡

215
00:18:34,495 --> 00:18:36,464
無理です…｡

216
00:18:36,464 --> 00:18:40,601
4, 000両なんて 到底 無理です｡

217
00:18:40,601 --> 00:18:44,438
ふん｡ 気概のないやつだ｡

218
00:18:44,438 --> 00:18:47,942
お前が料理で客を呼ぶことができれば➡

219
00:18:47,942 --> 00:18:50,444
かなわぬ夢ではあるまい｡

220
00:18:50,444 --> 00:18:53,948
ハッハッハッハッハ｡

221
00:18:53,948 --> 00:18:58,648
ぐずぐずしていたら 戯作に仕立てるぞ｡

222
00:19:07,461 --> 00:19:11,265
まず 乾かした ほうき草をゆでます｡

223
00:19:11,265 --> 00:19:16,971
そして 水にさらして
皮を剥ぐのだそうです｡

224
00:19:16,971 --> 00:19:20,808
繰り返し 冷たい水にさらして
もみ洗いしなくてはなりません｡

225
00:19:20,808 --> 00:19:23,144
気が遠くなるような仕事です｡

226
00:19:23,144 --> 00:19:25,444
分かりました｡

227
00:19:29,917 --> 00:19:35,089
後には おもしをかけて
水抜きをしなくてはなりませんが➡

228
00:19:35,089 --> 00:19:39,089
これも 書物を読む限り
恐ろしく厄介な手順です｡

229
00:19:47,101 --> 00:19:53,607
澪さん ほうき草の古い呼び名を
知っていますか｡

230
00:19:53,607 --> 00:19:55,543
いえ｡

231
00:19:55,543 --> 00:19:57,945
ははきぎと言うのだそうですよ｡

232
00:19:57,945 --> 00:20:00,781
ははきぎ？
はい｡ そうです｡

233
00:20:00,781 --> 00:20:04,118
は…｡
(あくび)

234
00:20:04,118 --> 00:20:07,455
これは失敬｡
先生｡

235
00:20:07,455 --> 00:20:11,625
もしかして ご本を調べるのに
一睡もしてはれへんのと違いますか｡

236
00:20:11,625 --> 00:20:13,625
いや そんなことは｡

237
00:20:16,130 --> 00:20:21,802
源斉先生｡ いつも いつも
ほんまに いつも➡

238
00:20:21,802 --> 00:20:25,602
ご厚意に甘えてしまって
申し訳ありません｡

239
00:20:28,142 --> 00:20:30,478
澪さん｡

240
00:20:30,478 --> 00:20:35,149
澪さんは 腎の臓を患い
むくみに苦しむ人を➡

241
00:20:35,149 --> 00:20:38,152
救いたいと考えているんでしょう？

242
00:20:38,152 --> 00:20:40,287
はい｡

243
00:20:40,287 --> 00:20:46,093
ならば そのお手伝いをするのは
これこそ医師の本分というものです｡

244
00:20:46,093 --> 00:21:11,185
♬～

245
00:21:11,185 --> 00:21:13,120
うっ…｡

246
00:21:13,120 --> 00:21:17,324
まるで氷やないか｡
このままやったらあかん｡

247
00:21:17,324 --> 00:21:20,194
大事ありません｡
そうかて｡

248
00:21:20,194 --> 00:21:22,530
やり遂げたいんです｡

249
00:21:22,530 --> 00:21:53,160
♬～

250
00:21:53,160 --> 00:21:56,360
どうした義兄上 やにわに｡

251
00:21:58,499 --> 00:22:03,199
今日は我らの同輩が
詰め腹を切らされた日だ｡

252
00:22:05,272 --> 00:22:11,846
ご公儀に背いた者を悼むことはかなわぬが
２人も働いた この部屋で➡

253
00:22:11,846 --> 00:22:16,016
命日に手を合わせても
咎められることはあるまい｡

254
00:22:16,016 --> 00:22:26,026
♬～

255
00:22:26,026 --> 00:22:31,526
死ぬ時は悔いのないようにしたいものだ｡

256
00:22:34,468 --> 00:22:41,141
このまま死ぬならば 悔いは何であろう｡

257
00:22:41,141 --> 00:22:43,143
何だ 柄にもない｡

258
00:22:43,143 --> 00:22:48,816
お前が悔いるとすれば 母上様のお望みに
応えられぬことであろう｡

259
00:22:48,816 --> 00:22:51,285
母の望み？ 何だ それは｡

260
00:22:51,285 --> 00:22:54,822
跡継ぎのことに決まっておろう｡

261
00:22:54,822 --> 00:22:57,491
それには心配は及ばん｡

262
00:22:57,491 --> 00:22:59,426
早帆が５人も
おのこを産んでおるのだから➡

263
00:22:59,426 --> 00:23:02,162
１人くらい分けてくれればよい｡ ん｡

264
00:23:02,162 --> 00:23:06,500
また そのようなことを｡
己でなんとかせい！

265
00:23:06,500 --> 00:23:33,260
♬～

266
00:23:33,260 --> 00:23:39,133
まあ！
なんと ふっくらとして おいしそうな｡

267
00:23:39,133 --> 00:23:42,002
これからは
べちょべちょや 焦げ焦げのご飯を➡

268
00:23:42,002 --> 00:23:45,802
夫や子らに食べさせなくて済みます｡

269
00:23:48,842 --> 00:23:54,982
夫は兄の朋友で 昔から存じておりました｡

270
00:23:54,982 --> 00:23:57,651
幼なじみだったのですか｡

271
00:23:57,651 --> 00:24:05,451
ええ｡ 妻となるまで 語り尽くせぬほどに
いろいろとありました｡

272
00:24:07,361 --> 00:24:10,831
私は幸せ者ですね｡

273
00:24:10,831 --> 00:24:14,031
思う人と結ばれたのですから｡

274
00:24:23,310 --> 00:24:26,810
早帆様が羨ましいです｡

275
00:24:31,518 --> 00:24:36,318
お許し下さいませ｡
身をわきまえぬ物言いを…｡

276
00:24:39,627 --> 00:24:41,662
澪さん｡

277
00:24:41,662 --> 00:24:44,798
もしや 心に思う殿方が➡

278
00:24:44,798 --> 00:24:48,268
いるのではありませぬか？

279
00:24:48,268 --> 00:24:53,068
恐らく どれほど慕っても添えぬ人が｡

280
00:24:58,646 --> 00:25:03,984
澪さん｡ 私を姉と思い
聞かせてはもらえませぬか｡

281
00:25:03,984 --> 00:25:06,484
どのような人なのか｡

282
00:25:14,628 --> 00:25:17,831
早帆様に…｡

283
00:25:17,831 --> 00:25:21,631
早帆様に よく似た人です｡

284
00:25:28,175 --> 00:25:32,175
報われるなど 端から望みません｡

285
00:25:33,981 --> 00:25:36,250
思いを打ち明けることも➡

286
00:25:36,250 --> 00:25:39,153
悟られることもない｡

287
00:25:39,153 --> 00:25:45,459
ただ その方に お健やかで➡

288
00:25:45,459 --> 00:25:49,159
お幸せにいてほしいと祈るばかりです｡

289
00:25:52,966 --> 00:25:56,637
なんと一途な｡

290
00:25:56,637 --> 00:26:02,810
私が そのお方なら
男冥利に尽きるというもの｡

291
00:26:02,810 --> 00:26:06,310
打ち明けて下さって ありがとう｡

292
00:26:10,284 --> 00:26:15,989
(早帆)そろそろ刻限ですね｡
帰り支度をいたします｡

293
00:26:15,989 --> 00:26:18,025
あの… 早帆様｡

294
00:26:18,025 --> 00:26:20,025
はい｡

295
00:26:25,499 --> 00:26:28,535
お帰りになられましたら➡

296
00:26:28,535 --> 00:26:33,240
私がお教えしたとおりに
白いご飯を炊いて下さい｡

297
00:26:33,240 --> 00:26:38,612
それから
すりおろした山芋をかけて下さい｡

298
00:26:38,612 --> 00:26:44,251
そして最後に これを載せて➡

299
00:26:44,251 --> 00:26:48,451
母上様にお召し上がり頂いて下さい｡

300
00:26:51,024 --> 00:26:54,261
これは？

301
00:26:54,261 --> 00:26:59,133
ははきぎの… ほうき草の実です｡

302
00:26:59,133 --> 00:27:02,433
むくみに効くと言われているそうです｡

303
00:27:08,475 --> 00:27:12,775
出過ぎたことをして申し訳ありません｡

304
00:27:24,658 --> 00:27:29,530
澪さん これを持って
一刻 おつきあい願えませぬか｡

305
00:27:29,530 --> 00:27:33,100
え？
こちらのご主人には 私からお願いし➡

306
00:27:33,100 --> 00:27:36,603
お店に迷惑のかからぬうちに
お帰しします｡

307
00:27:36,603 --> 00:27:40,240
さあ 急いで｡

308
00:27:40,240 --> 00:27:53,253
♬～

309
00:27:53,253 --> 00:27:55,553
戻りました｡
≪はい｡

310
00:28:04,998 --> 00:28:08,836
(重光)お姫様｡
重光｡ 母上のお加減はいかがか｡

311
00:28:08,836 --> 00:28:14,274
むくみは どうか｡
はっ｡ まだ引いてはおりませぬ…｡

312
00:28:14,274 --> 00:28:19,112
子細は後に｡
まずは急ぎ この人を厨に案内せよ｡

313
00:28:19,112 --> 00:28:30,724
♬～

314
00:28:30,724 --> 00:28:37,231
澪さん｡ その ははきぎ飯とやらを
あなたが ここで作って下さい｡

315
00:28:37,231 --> 00:28:39,166
え？
そなたたち➡

316
00:28:39,166 --> 00:28:43,604
万事 澪さんの指図に従うように｡
(一同)はい｡
あの…｡

317
00:28:43,604 --> 00:28:45,939
何も恐れることはありませぬ｡

318
00:28:45,939 --> 00:28:51,245
あとのことは私に任せて
存分に腕を振るって下さい｡

319
00:28:51,245 --> 00:29:47,245
♬～

320
00:29:54,942 --> 00:29:58,445
お連れいたしました｡

321
00:29:58,445 --> 00:30:00,645
≪(早帆)お通ししなさい｡

322
00:30:07,454 --> 00:30:13,254
澪さん｡ どうぞ それを我が母の前へ｡

323
00:31:48,088 --> 00:32:39,139
♬～

324
00:32:39,139 --> 00:32:42,142
(里津)早帆から聞きました｡➡

325
00:32:42,142 --> 00:32:48,342
私のむくみを気にかけて
これを作ってくれたのですね｡

326
00:32:54,154 --> 00:32:56,490
(里津)ああ…｡

327
00:32:56,490 --> 00:33:10,170
♬～

328
00:33:10,170 --> 00:33:19,312
私の父は
奥州南部家の御境奉行に仕えていました｡

329
00:33:19,312 --> 00:33:26,186
そこは幾たびも飢饉が襲う土地でした｡

330
00:33:26,186 --> 00:33:31,858
そこで生きる人々は
平生は口にもしなかった➡

331
00:33:31,858 --> 00:33:34,761
ははきぎの実に工夫を凝らして➡

332
00:33:34,761 --> 00:33:39,061
食べ物として 凶作にも耐えたのです｡

333
00:33:40,967 --> 00:33:47,274
よもや 食べ物があふれる この江戸で➡

334
00:33:47,274 --> 00:33:53,074
ははきぎの実を料理しようと思う
娘がいたとは｡

335
00:33:59,486 --> 00:34:02,522
人払いを｡

336
00:34:02,522 --> 00:34:05,825
重光 お前もお下がり｡

337
00:34:05,825 --> 00:34:07,825
はっ｡

338
00:34:19,306 --> 00:34:22,509
我が名は覚華院｡

339
00:34:22,509 --> 00:34:26,012
いや 里津と申す｡

340
00:34:26,012 --> 00:34:31,818
亡き父の家名は小松原｡

341
00:34:31,818 --> 00:34:34,621
小松原？

342
00:34:34,621 --> 00:34:37,657
(早帆)ごめんなさい 澪さん｡

343
00:34:37,657 --> 00:34:46,457
つる家の方々が 小松原と呼ぶ浪人は
我が兄 小野寺数馬です｡

344
00:34:49,970 --> 00:34:58,278
(里津)そなたが ははきぎ飯を作る間に
早帆が私に言った｡

345
00:34:58,278 --> 00:35:03,278
そなたを数馬の嫁に迎えてはと｡

346
00:35:04,985 --> 00:35:08,822
(里津)話にならぬと私は言った｡➡

347
00:35:08,822 --> 00:35:13,994
小野寺家の跡取りの嫁が 町娘➡

348
00:35:13,994 --> 00:35:18,832
しかも 料理人などと…｡

349
00:35:18,832 --> 00:35:27,507
なれど… そなたが作った
ははきぎ飯を食べるうち➡

350
00:35:27,507 --> 00:35:30,844
心が動いた｡

351
00:35:30,844 --> 00:35:39,544
そなたが食べる者の気持ちを
大切に思うておるのが よう分かった｡

352
00:35:41,254 --> 00:35:48,962
(里津)
そなたなら 立派に数馬の心と体を支え➡

353
00:35:48,962 --> 00:35:52,262
小野寺家を支えてくれよう｡

354
00:35:55,835 --> 00:36:04,277
２年の間 駒澤家で
早帆の下で行儀見習いをなさい｡

355
00:36:04,277 --> 00:36:10,817
そして しかるべき 旗本の養女となり➡

356
00:36:10,817 --> 00:36:15,655
小野寺家に嫁いできなさい｡➡

357
00:36:15,655 --> 00:36:18,491
御膳奉行の妻となるには➡

358
00:36:18,491 --> 00:36:21,995
数多の苦難もあろう｡➡

359
00:36:21,995 --> 00:36:27,667
なれど ははきぎの実を料理した
そなたなら➡

360
00:36:27,667 --> 00:36:30,570
きっと乗り越えられる｡

361
00:36:30,570 --> 00:36:36,242
親類縁者から不平不満も出ようが➡

362
00:36:36,242 --> 00:36:42,449
私の残る命を懸けて➡

363
00:36:42,449 --> 00:36:45,749
それらを封じてみせましょう｡

364
00:36:48,321 --> 00:36:51,321
よろしいですね？

365
00:36:56,796 --> 00:36:59,466
(早帆)澪さん｡

366
00:36:59,466 --> 00:37:01,666
答えるのです｡

367
00:37:06,239 --> 00:37:08,174
お許し下さいませ！

368
00:37:08,174 --> 00:37:12,979
澪さん…｡ 澪さん！

369
00:37:12,979 --> 00:37:16,850
(重光)いかがなされた！ お待ち下され！

370
00:37:16,850 --> 00:37:33,933
♬～

371
00:37:33,933 --> 00:37:37,771
怖い… 怖い｡

372
00:37:37,771 --> 00:37:44,644
お父はん お母はん 助けて｡

373
00:37:44,644 --> 00:37:47,444
助けて 野江ちゃん｡

374
00:38:10,970 --> 00:38:14,808
澪｡ 今日も寝つかれへんのか｡

375
00:38:14,808 --> 00:38:20,508
ご寮さん 風邪をひかれては大変です｡

376
00:38:22,482 --> 00:38:27,821
澪｡ 何で話 してくれんのだす｡

377
00:38:27,821 --> 00:38:34,427
あの日 早帆様のお屋敷で何があったんや｡

378
00:38:34,427 --> 00:38:37,096
何もあれしまへん｡

379
00:38:37,096 --> 00:38:41,935
ただ… 怖い夢を見ただけだす｡

380
00:38:41,935 --> 00:38:44,604
(芳)夢？

381
00:38:44,604 --> 00:38:49,904
夢やさかい もう思い出すこともおまへん｡

382
00:38:53,780 --> 00:38:55,780
御免！

383
00:38:57,617 --> 00:39:00,453
あっ これは お侍様
申し訳ごぜぇやせん｡

384
00:39:00,453 --> 00:39:02,388
夕餉は七つからでごぜぇやす｡

385
00:39:02,388 --> 00:39:04,791
あっ いや そうではない｡
(種市)えっ？

386
00:39:04,791 --> 00:39:10,663
ああ｡ 今夜の肴は銀杏の素揚げに
小鰭の天ぷらでごぜぇやす｡

387
00:39:10,663 --> 00:39:12,665
それは うまそうな…｡

388
00:39:12,665 --> 00:39:15,465
いや そうではない！
(種市)えっ？

389
00:39:17,370 --> 00:39:20,139
(重光)拙者は 小野寺家の用人で➡

390
00:39:20,139 --> 00:39:22,809
多浜重光と申す者｡

391
00:39:22,809 --> 00:39:27,647
小野寺家当主ご母堂 覚華院様が
澪殿を大層気に入られ➡

392
00:39:27,647 --> 00:39:31,985
是非とも行儀見習いにと仰せなのだ｡

393
00:39:31,985 --> 00:39:34,587
おそばにいて
身の回りの世話などしながら➡

394
00:39:34,587 --> 00:39:38,758
書や和歌 琴などの
雅なたしなみごとのほかにも➡

395
00:39:38,758 --> 00:39:41,227
武家の女人としての立ち居振る舞いを➡

396
00:39:41,227 --> 00:39:43,763
身につけることができる｡

397
00:39:43,763 --> 00:39:45,698
(種市)冗談言っちゃいけねぇ｡

398
00:39:45,698 --> 00:39:48,234
お澪坊をただ働きさせた上に➡

399
00:39:48,234 --> 00:39:52,105
さんざん恩に着せて教え込むのが
和歌やら琴だってぇのか｡

400
00:39:52,105 --> 00:39:55,942
そんなもんで腹が膨れるのか
生きていけるのかよ｡

401
00:39:55,942 --> 00:39:57,877
帰ってくんな！
(重光)待て待て待て｡➡

402
00:39:57,877 --> 00:39:59,812
武術も教えようというのだ｡

403
00:39:59,812 --> 00:40:03,249
覚華院様も早帆様も大層腕が立つ｡

404
00:40:03,249 --> 00:40:09,249
早帆様？
今 早帆様と言わはりましたなぁ｡

405
00:40:13,259 --> 00:40:17,964
多浜様｡ 澪は わてにとって
娘も同然でおます｡

406
00:40:17,964 --> 00:40:23,164
どうぞ包み隠さず
子細を話しておくんなはれ｡

407
00:40:31,277 --> 00:40:33,277
うん｡

408
00:40:38,818 --> 00:40:44,318
あの小松原様が御旗本だと…？

409
00:40:46,492 --> 00:40:49,395
(おりょう)澪ちゃん｡

410
00:40:49,395 --> 00:40:53,833
澪ちゃん すごいじゃないか！

411
00:40:53,833 --> 00:40:59,172
御旗本のところへ輿入れだなんて
とんでもない玉の輿だよ！

412
00:40:59,172 --> 00:41:01,107
おめでとう！

413
00:41:01,107 --> 00:41:05,678
どうしたんだい｡ うれしくないのかい｡

414
00:41:05,678 --> 00:41:09,678
事は そうたやすくはねぇぜ｡

415
00:41:16,189 --> 00:41:26,833
♬～

416
00:41:26,833 --> 00:41:32,633
全く 御旗本だなんて とんでもねぇや｡

417
00:41:35,141 --> 00:41:39,812
ただのご浪人てぇなら
いっそ 刀なんぞ捨てちまって➡

418
00:41:39,812 --> 00:41:44,150
このつる家を お澪坊ごともらってくれ
と言えるんだ｡

419
00:41:44,150 --> 00:41:49,489
そうさ お澪坊と一緒に つる家を…｡

420
00:41:49,489 --> 00:41:52,789
どうした ふき坊｡ 眠れねぇのか？

421
00:41:54,360 --> 00:41:58,160
澪姉さん お嫁に行くの？

422
00:42:01,501 --> 00:42:03,801
(種市)行ったら寂しいか｡

423
00:42:06,673 --> 00:42:11,173
お嫁に行きたいのに
行けなかったら寂しい｡

424
00:42:20,186 --> 00:42:24,190
そうだな ふき坊｡

425
00:42:24,190 --> 00:42:26,693
ふき坊の言うとおりだ｡

426
00:42:26,693 --> 00:43:05,832
♬～

427
00:43:05,832 --> 00:43:10,002
(芳)２本の指だけ氷のようや｡

428
00:43:10,002 --> 00:43:12,839
おまはんが こないな怪我をしたんは➡

429
00:43:12,839 --> 00:43:17,839
御膳奉行が詰め腹を切らされた
いう話を聞かされた時やったなあ｡

430
00:43:22,181 --> 00:43:29,522
一途に料理だけで生きてきた子が
その大事な指を怪我してしまうほど…｡

431
00:43:29,522 --> 00:43:33,493
おまはんにとって 小松原様は…➡

432
00:43:33,493 --> 00:43:40,293
小野寺様は
それほどまでに大事なお方なんやなあ｡

433
00:43:45,805 --> 00:43:48,141
(芳)澪｡

434
00:43:48,141 --> 00:43:50,941
幸せになっておくれ｡

435
00:43:53,813 --> 00:43:56,482
(芳)おまはんが幸せにならへんかったら➡

436
00:43:56,482 --> 00:44:01,354
わては亡うなった おまはんの二親に
顔向けできへんのや｡

437
00:44:01,354 --> 00:44:03,356
けど ご寮さん…｡

438
00:44:03,356 --> 00:44:06,826
わてのことなら 心配せんかて構へん｡

439
00:44:06,826 --> 00:44:09,662
もう 前のわてとは違う｡

440
00:44:09,662 --> 00:44:15,962
この江戸で一人で生きていける才覚も
健やかな体もおますのや｡

441
00:44:18,838 --> 00:44:23,338
ご寮さん｡ 私には…｡

442
00:44:25,611 --> 00:44:31,311
私には
小松原様のお気持ちが分かりません｡

443
00:44:33,352 --> 00:44:38,624
若くもない｡ 美しくもない｡

444
00:44:38,624 --> 00:44:43,324
こないな私を 望んでくれるとは
思われへんのです｡

445
00:45:00,479 --> 00:45:04,650
こいつはいけねぇ いけねぇよ｡

446
00:45:04,650 --> 00:45:08,487
こいつだ！ このとろとろ茶碗蒸し｡

447
00:45:08,487 --> 00:45:13,659
やっぱり こいつはいけねぇ｡
ようやく ありつけたぜ｡

448
00:45:13,659 --> 00:45:18,831
毎年 これの初日は昼も夜も
お客が途切れませんよって｡

449
00:45:18,831 --> 00:45:22,301
旦那さん お味噌汁も
火にかけておきますね｡

450
00:45:22,301 --> 00:45:26,672
おう ありがとよ｡
ほな そろそろ失礼させてもらいまひょ｡

451
00:45:26,672 --> 00:45:28,672
はい｡

452
00:45:30,509 --> 00:45:35,348
(勝手口が開く音)
うう… 寒い 寒い 寒い｡

453
00:45:35,348 --> 00:45:37,783
まずは 熱いのを頼む｡

454
00:45:37,783 --> 00:45:40,453
はい｡

455
00:45:40,453 --> 00:45:43,789
小腹も減っている｡ 何か食わしてくれ｡

456
00:45:43,789 --> 00:45:57,136
♬～

457
00:45:57,136 --> 00:46:01,807
小松原様｡
ん｡

458
00:46:01,807 --> 00:46:06,607
いや 小野寺様と申し上げるべきですかね｡

459
00:46:10,483 --> 00:46:15,154
お前さん 酒だの何だの言う前に
きちんと筋を通して➡

460
00:46:15,154 --> 00:46:17,657
話すべきことが
あるんじゃねぇんですかい｡

461
00:46:17,657 --> 00:46:32,104
♬～

462
00:46:32,104 --> 00:46:35,104
確かに そうだな｡

463
00:46:54,126 --> 00:46:58,130
長い間 たばかって すまなかった｡

464
00:46:58,130 --> 00:47:00,466
そんなことじゃねぇ！

465
00:47:00,466 --> 00:47:03,970
お澪坊の気持ちを考えたことがあるのか
ってぇ話だ！➡

466
00:47:03,970 --> 00:47:07,473
本当なら 玉の輿で浮かれても
おかしかねぇのに➡

467
00:47:07,473 --> 00:47:10,509
お澪坊は ずっと沈んだままだ！➡

468
00:47:10,509 --> 00:47:14,246
母親やら 妹やら 家来やらが
いろいろ言ってきたところで➡

469
00:47:14,246 --> 00:47:19,085
肝心要のお前さんは これまで
知らぬ顔の半兵衛だ！

470
00:47:19,085 --> 00:47:23,385
人の心をもてあそぶのも
いい加減にしろって話だよ！

471
00:47:38,437 --> 00:47:43,137
すまないが
２人で話をさせてもらえまいか｡

472
00:48:15,141 --> 00:48:19,441
これでは話にならぬ｡ こちらへ｡

473
00:48:47,773 --> 00:48:51,444
う～ん…｡

474
00:48:51,444 --> 00:48:55,781
このところ 母や 妹や 重光が➡

475
00:48:55,781 --> 00:49:02,455
何やら 俺に隠れて こそこそと
様子がおかしいと思っていた｡

476
00:49:02,455 --> 00:49:08,327
妹にせがまれ お忍びで ここに来たことも
義弟からは聞いておったが｡

477
00:49:08,327 --> 00:49:11,130
フッ なるほどな｡

478
00:49:11,130 --> 00:49:13,430
早帆の考えそうなことだ｡

479
00:49:16,802 --> 00:49:21,502
やはり ご存じなかったのですね｡

480
00:49:24,477 --> 00:49:30,777
全ては 小松原様のお気持ちの
関わりのないところで…｡

481
00:49:40,960 --> 00:49:43,260
このまま死ぬならば…｡

482
00:49:48,100 --> 00:49:54,400
このまま死ぬならば 悔いは何であろう｡

483
00:49:59,812 --> 00:50:05,451
(匂いを嗅ぐ)

484
00:50:05,451 --> 00:50:08,787
何やら匂うぞ｡

485
00:50:08,787 --> 00:50:10,787
はっ！

486
00:50:20,399 --> 00:50:22,399
ああ…｡

487
00:50:32,478 --> 00:50:34,513
フフフフ…｡

488
00:50:34,513 --> 00:50:37,983
フッ ハハハッ…｡

489
00:50:37,983 --> 00:50:42,855
ハッハッハッハッハッハッ…｡

490
00:50:42,855 --> 00:50:48,627
ハハハハハハハッ｡
小松原様 笑い過ぎです｡

491
00:50:48,627 --> 00:50:50,927
フフフフ…｡

492
00:51:02,174 --> 00:51:04,974
俺の女房殿にならぬか｡

493
00:51:13,686 --> 00:51:18,686
ともに生きるならば 下がり眉がよい｡

494
00:51:20,859 --> 00:51:40,346
♬～

495
00:51:40,346 --> 00:51:45,985
答えろ 下がり眉｡

496
00:51:45,985 --> 00:51:48,685
俺の女房殿にならぬか｡

497
00:51:57,997 --> 00:52:00,833
お澪坊 さっさと答えんだよぅ！

498
00:52:00,833 --> 00:52:04,533
なるのか ならねぇのか
はっきり答えな お澪坊！

499
00:52:11,477 --> 00:52:16,677
そうか なるのだな｡

500
00:52:20,019 --> 00:52:21,954
はい｡

501
00:52:21,954 --> 00:52:57,756
♬～

502
00:52:57,756 --> 00:53:03,562
そうか… お澪坊をもらってくれるのかい｡

503
00:53:03,562 --> 00:53:08,000
ありがとよ｡ ありがとよ…｡

504
00:53:08,000 --> 00:53:28,020
♬～

505
00:53:28,020 --> 00:53:32,820
この形で ここに来るのも
これが最後か｡

506
00:53:39,665 --> 00:53:41,665
見てみろ｡

507
00:53:44,970 --> 00:53:46,970
よい月だ｡

508
00:53:54,480 --> 00:53:58,150
よいか｡

509
00:53:58,150 --> 00:54:00,850
決して無理はするな｡

510
00:54:18,837 --> 00:54:24,510
(雨音)

511
00:54:24,510 --> 00:54:28,380
今夜は そろそろ しまいにしようか｡
はい｡ ほな ２階の座敷を片づけてきます｡

512
00:54:28,380 --> 00:54:32,380
ありがとよ｡
おい ふき 暖簾しまってきな｡

513
00:54:35,154 --> 00:54:38,791
あっ 源斉先生！ あ～ どうぞ！➡

514
00:54:38,791 --> 00:54:42,261
どうぞ どうぞ｡

515
00:54:42,261 --> 00:54:46,465
お澪坊 ぐずぐずしてねぇで
先生に摘み入れ汁を頼むぜ｡

516
00:54:46,465 --> 00:54:48,965
はい｡
澪さん｡

517
00:54:54,339 --> 00:54:57,142
おめでとうございます｡

518
00:54:57,142 --> 00:54:59,142
あ…｡

519
00:55:04,283 --> 00:55:06,583
ありがとうございます｡

520
00:55:08,987 --> 00:55:11,657
しきたりの違いなど➡

521
00:55:11,657 --> 00:55:14,159
いろいろと難しいこともあるでしょうが➡

522
00:55:14,159 --> 00:55:16,659
澪さんなら きっと やっていけます｡

523
00:55:23,502 --> 00:55:26,839
それでは｡
えっ｡ いや 源斉先生➡

524
00:55:26,839 --> 00:55:29,508
飯を食ってって下せぇよ｡
今すぐ 熱いの入れますから｡

525
00:55:29,508 --> 00:55:33,245
いえ｡ 往診がありますので｡

526
00:55:33,245 --> 00:55:36,045
あ…｡
(種市)先生！

527
00:55:39,618 --> 00:55:42,521
(種市)傘！ 傘 傘！
あっ！

528
00:55:42,521 --> 00:55:45,424
源斉先生！

529
00:55:45,424 --> 00:55:47,624
源斉先生！

530
00:56:05,477 --> 00:56:19,157
♬～

531
00:56:19,157 --> 00:56:23,657
(種市)雨なのに 傘を忘れるなんざ…｡

532
00:56:29,167 --> 00:56:33,772
澪さん この度は
よう 心を決めて下さいました｡➡

533
00:56:33,772 --> 00:56:39,272
兄の縁談の目処が立ったことは
母の心の支えになっていますよ｡

534
00:56:41,513 --> 00:56:43,782
なるべく 身一つで おいでなさい｡

535
00:56:43,782 --> 00:56:47,653
入り用なものは
当家で ご用意しますからね｡

536
00:56:47,653 --> 00:56:51,123
ありがとうございます｡

537
00:56:51,123 --> 00:56:55,794
あの… 早帆様｡

538
00:56:55,794 --> 00:57:00,666
父の形見のお箸だけ
持っていくのを お許し下さい｡

539
00:57:00,666 --> 00:57:05,137
(早帆)お箸？
はい｡

540
00:57:05,137 --> 00:57:11,910
塗師だった父の作った塗り箸です｡
形見の品です｡

541
00:57:11,910 --> 00:57:14,410
さようですか｡

542
00:57:18,684 --> 00:57:26,158
塗り箸は いかによいものでも
格としては低いのです｡➡

543
00:57:26,158 --> 00:57:33,432
小野寺も 駒澤も 食に関わる役職ゆえ
そのようなことには厳しいのです｡

544
00:57:33,432 --> 00:57:40,205
お父上の形見の品なら やむをえませんが
家の者には知られぬようになさい｡

545
00:57:40,205 --> 00:58:04,396
♬～

546
00:58:04,396 --> 00:58:07,633
じゃあ 今月いっぱいで
一旦 店を閉めるんだな？

547
00:58:07,633 --> 00:58:14,973
ああ｡ で 半月後に新しい料理人で
始めるつもりだ｡

548
00:58:14,973 --> 00:58:19,277
なら 俺が ここへ来るのも今夜が最後だ｡

549
00:58:19,277 --> 00:58:24,116
え？ いや 又さんには
｢三方よしの日｣を引き続き…｡

550
00:58:24,116 --> 00:58:26,985
(又次)悪いが諦めてくんな｡

551
00:58:26,985 --> 00:58:32,591
もとは 翁屋の楼主が澪さんを見込んで
俺を手伝いに よこしたんだ｡

552
00:58:32,591 --> 00:58:36,291
澪さんが抜けるとなりゃ
事情が違ってくる｡

553
00:58:38,764 --> 00:58:42,234
あ…｡ 承知したぜ 又さん｡

554
00:58:42,234 --> 00:58:44,934
あとのことは 俺がなんとかすらぁ｡

555
00:58:46,605 --> 00:58:52,944
すまねぇな｡ 今日一日
精いっぱい 務めさせてもらうぜ｡

556
00:58:52,944 --> 00:58:55,444
おう｡ 頼んだぜ｡

557
00:58:58,750 --> 00:59:00,950
(種市)ふき坊｡

558
00:59:09,394 --> 00:59:15,801
さてと｡ おっ こいつは いい鰯だ｡

559
00:59:15,801 --> 00:59:18,637
蒲焼きにするか｡
梅干しで炊きます｡

560
00:59:18,637 --> 00:59:21,139
ほう そりゃ うまそうだ｡

561
00:59:21,139 --> 00:59:24,042
野江ちゃんの好物です｡

562
00:59:24,042 --> 00:59:26,742
今日のお弁当に入れますね｡

563
00:59:28,647 --> 00:59:32,084
澪さん｡

564
00:59:32,084 --> 00:59:37,889
あさひ太夫の弁当は もう作らなくていい｡
え…｡

565
00:59:37,889 --> 00:59:42,728
いや 作ってくれるな｡

566
00:59:42,728 --> 00:59:47,232
何で… 又次さん 何で そないなこと…｡
俺じゃねえ｡

567
00:59:47,232 --> 00:59:49,732
あさひ太夫からの伝言だ｡

568
00:59:52,070 --> 00:59:56,908
そうか｡ 澪ちゃんが｡

569
00:59:56,908 --> 01:00:01,446
あの澪ちゃんが お嫁に…｡

570
01:00:01,446 --> 01:00:25,270
♬～

571
01:00:25,270 --> 01:00:28,770
又次｡
はい｡

572
01:00:30,809 --> 01:00:33,509
澪ちゃんに伝えてくれるか｡

573
01:00:38,150 --> 01:00:44,150
おめでとう｡ どうか 達者で暮らして｡

574
01:00:49,161 --> 01:00:52,664
達者で暮らしてって…｡

575
01:00:52,664 --> 01:00:55,167
(又次)御旗本の奥様になろうって人が➡

576
01:00:55,167 --> 01:00:57,836
吉原の遊女と関わりがあるとなりゃ➡

577
01:00:57,836 --> 01:01:01,306
迷惑がかかる｡➡

578
01:01:01,306 --> 01:01:04,843
そう考えておいでなのさ｡

579
01:01:04,843 --> 01:01:07,879
そんな…｡

580
01:01:07,879 --> 01:01:11,316
ほな 野江ちゃんには 二度と…｡

581
01:01:11,316 --> 01:01:16,521
あさひ太夫のことなら心配ねぇ｡
何があっても 俺が守る｡

582
01:01:16,521 --> 01:01:18,821
けど…｡
(又次)忘れちまいな｡

583
01:01:20,692 --> 01:01:25,564
あさひ太夫のことも 翁屋のことも｡

584
01:01:25,564 --> 01:01:29,364
これまであった何もかも 一切合財…｡

585
01:01:35,807 --> 01:01:39,644
いいから 料理に精を出しな｡

586
01:01:39,644 --> 01:01:44,282
あと何度 包丁を握れるか
分からねぇんだ｡➡

587
01:01:44,282 --> 01:01:49,154
武家に嫁いだ女に求められるのは
料理の腕なんかじゃねぇ｡

588
01:01:49,154 --> 01:01:54,292
下手すりゃ 包丁を持つことすら
許されねぇかもしれねぇぜ｡

589
01:01:54,292 --> 01:02:46,592
♬～

590
01:02:52,284 --> 01:02:57,084
[ 回想 ]
ともに生きるならば 下がり眉がよい｡

591
01:03:01,026 --> 01:03:04,026
(足音)

592
01:03:10,302 --> 01:03:13,171
源斉先生｡

593
01:03:13,171 --> 01:03:15,674
澪さん？

594
01:03:15,674 --> 01:03:19,177
どうされたのです？ こんな所で｡

595
01:03:19,177 --> 01:03:22,477
少し 考え事を…｡

596
01:03:30,188 --> 01:03:32,688
つる家まで送りましょう｡

597
01:04:08,660 --> 01:04:10,960
源斉先生｡

598
01:04:13,531 --> 01:04:24,031
道が枝分かれして 迷いに迷った時
源斉先生なら どうなさいますか｡

599
01:04:30,849 --> 01:04:35,149
私なら 心星を探します｡

600
01:04:38,590 --> 01:04:41,259
心星？

601
01:04:41,259 --> 01:04:45,130
そう 心星です｡

602
01:04:45,130 --> 01:04:49,830
あそこに輝く あれが心星ですよ｡

603
01:04:52,003 --> 01:04:57,709
あの星こそが 天の中心なんです｡

604
01:04:57,709 --> 01:05:03,209
全ての星は
あの心星を軸に回っているんですよ｡

605
01:05:06,818 --> 01:05:13,591
悩み 迷い
考えが堂々巡りしている時でも➡

606
01:05:13,591 --> 01:05:21,366
きっと 自身の中には
揺るぎないものが潜んでいるはずです｡

607
01:05:21,366 --> 01:05:24,366
これだけは譲れないというものが｡

608
01:05:30,008 --> 01:05:36,448
それこそが
その人の生きる標となる心星でしょう｡

609
01:05:36,448 --> 01:05:58,136
♬～

610
01:05:58,136 --> 01:06:01,473
どうぞ どうぞ｡ どうぞ｡

611
01:06:01,473 --> 01:06:03,473
うまいね！

612
01:06:05,643 --> 01:06:08,943
おいしい｡ ほんまに おいしいわ｡

613
01:06:10,815 --> 01:06:13,718
こいつはいけねぇ｡ ヘヘヘッ｡

614
01:06:13,718 --> 01:06:16,218
私 こんなにおいしいの
生まれて初めてです｡

615
01:06:24,162 --> 01:06:26,998
ごちそうさん！
(芳)あっ ありがとうございます｡

616
01:06:26,998 --> 01:06:29,834
おかげさんで生き返ったぜ｡
ありがとよ！

617
01:06:29,834 --> 01:06:46,834
♬～

618
01:07:41,773 --> 01:07:44,473
よう 下がり眉｡

619
01:07:47,579 --> 01:07:49,579
どうした｡

620
01:07:57,956 --> 01:08:02,627
俺の目の中に 何かあるのか｡

621
01:08:02,627 --> 01:08:06,627
ん？ フッ ハハッ｡

622
01:08:11,135 --> 01:08:13,435
お許し下さいませ｡

623
01:08:17,909 --> 01:08:23,481
料理は 私の生きる縁です｡

624
01:08:23,481 --> 01:08:28,987
それを手放すなど できません｡

625
01:08:28,987 --> 01:08:35,226
この命がある限り 一人の料理人として➡

626
01:08:35,226 --> 01:08:38,926
料理の道を 存分に全うしたく存じます｡

627
01:09:12,630 --> 01:09:16,130
顔を上げよ 下がり眉｡

628
01:09:23,141 --> 01:09:27,841
その道を選ぶのだな｡

629
01:09:31,649 --> 01:09:33,849
はい｡

630
01:09:40,358 --> 01:09:46,764
そうか 相分かった｡

631
01:09:46,764 --> 01:10:26,971
♬～

632
01:10:26,971 --> 01:10:29,671
ならば その道を行くのだ｡

633
01:10:36,981 --> 01:10:40,781
あとのことは 何も案ずるな｡

634
01:10:43,855 --> 01:10:48,292
お前は 誰にも 何も言わずともよい｡

635
01:10:48,292 --> 01:10:50,792
全て俺に任せておけ｡

636
01:10:54,165 --> 01:10:56,167
分かったな｡

637
01:10:56,167 --> 01:12:08,506
♬～

638
01:12:08,506 --> 01:12:10,506
よいか 澪｡

639
01:12:15,179 --> 01:12:20,179
その道を行くと決めた以上
もはや迷うな｡

640
01:12:23,688 --> 01:12:28,025
道は➡

641
01:12:28,025 --> 01:12:30,328
一つきりだ｡

642
01:12:30,328 --> 01:13:12,036
♬～

643
01:13:12,036 --> 01:13:15,806
あさひ太夫をよこしてもらいましょう｡

644
01:13:15,806 --> 01:13:19,677
いつの日か また
あの橋の真ん中に２人並んで➡

645
01:13:19,677 --> 01:13:22,313
真っ青な天を仰ぐ日が来る｡

646
01:13:22,313 --> 01:13:25,813
いつの日か きっと｡

